海洋葬とは?メリット・デメリットから料金相場まで徹底解説

最終更新日:2025.04.25

海洋葬とは何か?

近年、自然に還りたいという想いから、葬送方法として海洋葬を選択する方が増えています。この記事では、そんな海洋葬の基礎知識やメリット・デメリット、料金相場を解説します。また、安心して海洋葬を行なうために欠かせない散骨施工業者の選び方もご紹介。海洋葬を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

海洋葬とは?どのような葬送方法?

海洋葬とは?

海洋葬とは、火葬後に粉末状にした遺骨を海へ撒く「散骨」という葬送方法のことです。「海洋散骨」と言われることもあります。

日本では近年、従来の埋葬方法に代わる選択肢として注目されています。宗教や形式に捉われない自由な葬送をしたい人からの支持が多く、特に「自然に還りたい」という故人の想いや、環境に配慮した生き方を重んじる人々の間で広まりつつあります。

海洋葬と他の供養方法との違い

海洋葬の大きな特徴は、墓地や納骨堂などの物理的な埋葬場所を必要としない点にあります。これにより、高額な墓地購入費や維持管理費が不要となり、経済的な負担を軽減できます。遠方に住む遺族が定期的に墓参りへ行く必要もないため、ライフスタイルに合った供養方法としても選ばれています。

樹木葬と同様に自然に還るという考え方を持つ供養方法ではありますが、海洋葬はより開放的で、土地に縛られないのが特徴です。また、手元供養は遺骨の一部を自宅に保管するスタイルですが、海洋葬は全て自然に還すという違いがあります。

海洋葬のメリット – 今、選ばれる理由とは?

今、海洋葬は時代に合った葬送方法として注目を集めています。この章では、海洋葬が選ばれる理由をご紹介します。

経済的な負担を抑えられる

海洋葬は、一般的な埋葬や納骨に比べて費用を大幅に抑えられる葬送方法です。従来の埋葬方法では、墓地の購入や石碑の建立、永代供養料などが必要ですが、海洋葬ではこれらが不要となります。

費用としては火葬後の粉骨・散骨だけで完結するため、必要最小限の費用で供養が行なえます。また、近年は生活スタイルの多様化に伴い、シンプルかつ心のこもった葬送を求める人も増加傾向にあります。そのニーズに応える手段として、無理なく実施できる海洋葬が選ばれています。

自然志向・宗教に縛られない自由な供養のニーズが増えている

海洋葬には、「自然に還りたい」「形式に縛られず、自由に見送りたい」といった想いを反映できるという魅力もあります。宗教的儀式や慣習に捉われず、個人の価値観を大切にした供養が可能で、宗派を問わない自由な葬送ができます。

自然と一体となるような葬送は、心のこもったセレモニーとして、遺族にとっても故人とのつながりを実感できる時間となります。ここも海洋葬が選ばれている理由のひとつです。

墓じまいや無縁墓の心配がなくなる

現代の日本では少子高齢化や核家族化が進んでいます。この社会的な問題により、将来的な「墓じまい」や「無縁墓」への不安を抱える人も増えています。

海洋葬はお墓を持たないスタイルのため、維持・管理の負担や子世代への継承問題を解消できます。お墓がないことにより、子どもや親族に負担をかける心配もなく、残される家族にとっても安心できる供養方法として選ばれています。

また、家族構成やライフスタイルの変化に柔軟に対応できる点も、海洋葬が現代における葬送の新しい選択肢となりうる理由です。

海洋葬のデメリット – 海洋葬の注意点とは何か?

海洋葬には多くのメリットがありますが、その一方で以下のようなデメリットもあります。

手を合わせる「場所」がなくなる

海洋葬はお墓を必要としない供養方法です。手を合わせるための「具体的な場所」がなくなります。そのため、節目に故人を偲ぶ場がないことに、寂しさを感じる人も少なくありません。

また、家族や親族がそれぞれ離れた地域に住んでいる場合、お墓参りする場所がないことで、供養の機会が減ることもあります。こうした点を踏まえ、海洋葬を行なう際は手元供養など、他の方法と組み合わせることを考えておくことが推奨されます。

親族の理解が得られない場合がある

海洋葬はまだ一般的な認知が進んでいない地域や世代もあり、親族の理解が得られないケースもあります。伝統的な墓地埋葬に慣れている高齢の家族から反対されることもあるため、事前にしっかりと話し合い、意向を共有することが重要です。

供養は家族全体で心を込めて行なうものだからこそ、感情面でのすれ違いがないよう丁寧な説明と配慮が求められます。

一度散骨すると遺骨を取り戻せない

海洋葬では、粉骨した遺骨を海に還すため、一度散骨をするとその遺骨を取り戻すことができません。そのため、「やはり手元に残しておきたい」「お墓に納めたくなった」と後から気持ちが変わっても対応できないという点に注意が必要です。

後悔しないよう、事前に本当に納得したうえで選択することが大切です。希望がある場合は一部の遺骨を手元に残す選択肢も考慮するとよいでしょう。

天候や海の状況で散骨が延期になることがある

海洋葬は自然環境の影響を受けやすく、荒天や高波などがあると、予定通りに実施できません。特にチャーター散骨や乗船型のプランでは、海の状況に応じて延期や中止になったりするため、柔軟なスケジューリングが求められます。

また、遠方から参列する場合には交通手段や宿泊先の調整も必要となることから、事前にしっかりと準備することが必要になります。

マナーを守らずに実施するとトラブルを招く

海洋葬は自由な供養方法である一方、関係機関が定めているガイドラインに則り、周囲に配慮して行なう必要があります。

たとえば、「花や副葬品を大量に流す」などの行為は環境や他の利用者に悪影響を与えます。近隣住民とのトラブルに発展する可能性もあるでしょう。

海洋葬を行なう際は、信頼できる専門業者に依頼し、適切なマナーと方法で実施しましょう。それが、トラブルを回避しつつ故人を見送れることにつながります。

海洋葬は違法?

海洋葬は、法的に制限があるものではないため、違法な行為ではありません。しかし、海洋葬を行なう際は、厚生労働省や一般社団法人日本海洋散骨協会などの関係機関が定めているガイドラインに従う必要があります。

また、自治体によっては独自にルールを設けていることもあります。それらの決まり事を破らずに、節度をもって実施することが求められます。

海洋葬の流れ

散骨前の準備

海洋葬を行なう前には、いくつか準備が必要です。まず、遺骨はそのままの状態で撒くことはできません。そのため、遺骨をパウダー化する「粉骨」を実施する必要があります。粉骨では、専用の機器による衛生的な処理が求められるので、業者に依頼するのが一般的です。

また、必要な書類としては「火葬許可証」や「埋葬許可証」などのコピーが必要になります。改葬を伴う場合には「改葬許可証」も求められることがあります。これらの書類は散骨業者が代行取得することもありますので、事前に確認しておくとスムーズです。

当日の流れ

海洋葬当日は、指定の港に集合し、乗船手続きを行なった後、船で散骨ポイントまで移動します。所要時間はプランによって異なりますが、乗船から帰港までおおよそ1〜2時間程度が一般的です。

現地に到着したら、献花や献酒などを行ない、遺骨を海に撒きます。セレモニーの進行は業者のスタッフがサポートしてくれるため、安心して故人を偲ぶことができます。静かな時間の中で、自然の一部へと還る故人を見送る、心に残るセレモニーとなるでしょう。

散骨後にもらえる証明書やオプションサービス

海洋葬を終えると、多くの業者では「散骨証明書」が発行されます。これは、散骨を行なった日付や場所(緯度・経度)が記載されたものです。散骨証明書を故人を偲ぶ記録として保管する人も少なくありません。

また、チャータープランなどでは、散骨時の写真がサービスとして提供されることもあります。さらに、手元供養品の販売や、年に一度の「献花セレモニー」「天国への手紙」など、アフターサービスを提供している業者もあります。

海洋葬の費用はどれくらいかかる?

委託(代行)散骨

委託散骨とは、遺族に代わって業者が遺骨を海に撒いてくれるプランです。後述する合同散骨プランやチャーター散骨プランより、費用を抑えることができます。

料金相場は、3万円〜5万円程度が一般的です。セレモニーへの立ち会いはありませんが、ライブ配信で散骨の様子を確認できたり、写真・動画を提供してくれたりします。遠方に住んでいたり、時間や事情により立ち会いが難しい遺族に選ばれることが多いプランです。

合同散骨

合同散骨は、複数の遺族が同じ船に乗り、同時に散骨を行なうスタイルです。費用相場は10万円〜20万円程度と、比較的手頃な価格で海洋葬を行なえます。

個別の時間は限られますが、故人との最後の時間を海の上で過ごすことができ、他の遺族とも自然な形で共感や交流が生まれることもあります。予算と参加希望のバランスを取りたい人に適しています。

チャーター散骨

チャーター散骨は、1組の家族・遺族だけで船を貸し切り、完全プライベートな空間で故人を見送るスタイルです。費用相場は15万円〜30万円前後です。船のサイズや人数、場所により料金が変動します。

献花・献酒・音楽など希望に応じたカスタマイズも可能なため、セレモニーにこだわりたい人に人気です。周囲を気にせず、ゆったりとした時間の中でお別れができるのが大きな特長です。

費用に含まれるもの・別途かかる費用

業者やプランによって異なりますが、費用には通常、粉骨作業・乗船料・散骨サポート・献花や献酒・散骨証明書などが含まれます。ただし、遺骨の輸送費、追加の乗船者費用、写真や動画の撮影サービス、法要や記念品などは別料金になる場合があります。また、天候不良による日程変更や、港までの交通費も基本的には別料金となります。事前に見積もりを確認し、追加費用が発生する部分をしっかり確認しておきましょう。

どんな人が海洋葬に向いている?向いていない?

海洋葬が向いている人の特徴

海洋葬は、次のような人に向いています。

  • 自然に還るという考え方に共感できる
  • 従来の宗教儀礼に捉われたくない
  • 自然志向のライフスタイルを好む
  • 海に思い入れがある
  • 子どもや親族にお墓の管理負担をかけたくない

このような考えを持つ人に海洋葬は選ばれることが多いです。また、生前からシンプルな葬儀を望んでいた人や、費用を抑えた合理的な供養を望む人にとっても、海洋葬は最適な葬送方法となります。

向いていない人の特徴

一方で、海洋葬は次のような人に不向きです。

  • お墓のような「形ある場所」を残したい
  • 定期的にお墓参りをしたい
  • 家族や親族の間で海洋散骨に対する理解が得られない
  • 宗教上の理由や地域の風習により散骨に否定的な考えを持っている

このような状態で海洋葬を実施すると、トラブルが起きたり、後悔につながったりします。家族や親族でよく話し合ったうえで最適な葬送方法を選ぶことをおすすめします。

信頼できる海洋葬業者の選び方

後悔のない満足できる海洋葬を行なうには、それをサポートしてくれる業者の選び方が大切になります。この章では、信頼できる海洋葬業者の選び方をチェックしていきましょう。

実績・口コミを確認する

海洋葬業者を選ぶ際は、まずその業者の実績と利用者の口コミを確認しましょう。公式サイトだけでなく、第三者のレビューサイトやSNSを確認するのがおすすめです。長年の運営実績がある業者や、実際に利用した人からの評価が高い業者は、信頼性が高いので安心です。

協会の加盟状況を確認する

業界団体や協会に加盟しているかどうかも、業者の信頼性を見極めるポイントの一つです。たとえば「日本海洋散骨協会」などに加盟している業者は、ガイドラインやマナーを守った運営を実施していることが証明されています。一定の基準をクリアしている業者かどうかを判断する目安になります。

費用だけでなく、サービス内容もチェックする

海洋葬の費用はプランによって大きく異なりますが、単に安いという理由だけで業者を選ばないようにしましょう。料金に含まれるサービス内容やサポートの質、実際に対応するスタッフの経験や柔軟性なども比較するのがおすすめです。納得感のある内容で海洋葬できるかどうかが重要になります。

説明・サポートの丁寧さを確認する

問い合わせ時の対応や説明の丁寧さも、信頼できる業者かどうかを見極めるポイントになります。不明点や不安な点に対して誠実に対応してくれるか、無理な勧誘をしてこないかなどを確認し、安心して任せられるパートナーであるかを判断しましょう。

散骨証明書の発行・アフターケアの有無をチェックする

海洋葬の後に発行される「散骨証明書」や、手紙を届けるなどのアフターサービスの有無も確認したいポイントです。こうしたサービスは、遺族の心のケアや後悔のない葬送を支える大切なサポートです。きめ細やかな対応がある業者は、信頼性が高いと言えます。

海洋葬を検討するときのチェックポイント

自分の価値観や供養観を見つめ直す

海洋葬を選ぶ前に大切なのは、自分自身の死後のあり方や供養への考え方を見つめ直すことです。自然に還りたいという思い、墓石を持たないシンプルな形を望む気持ちなど、海洋葬を選ぶ理由は人それぞれです。

宗教的なこだわりの有無や、生前にどのようなライフスタイルを大切にしていたかなどを振り返ることで、自分に本当に合った葬送方法かどうかを見極められます。

家族や親族と十分に話し合う

海洋葬は従来のお墓に納骨する供養と異なるため、家族や親族との間で意見の違いが生じることもあります。後々のトラブルを避けるためにも、事前に海洋葬を希望する理由をしっかり伝え、理解と同意を得ることが重要です。

特に親しい人ほど感情的な思い入れが強いため、丁寧な話し合いを通じて納得感を共有することが、後悔しない選択につながります。

散骨後の供養スタイルをイメージしておく

海洋葬は散骨によって遺骨を海へ還すため、物理的な「お墓」が残りません。そのため、散骨後にどのように故人を偲ぶか、供養のスタイルを事前にイメージしておくことが大切です。

記念日には海に花を手向ける、写真や遺品を大切にする、仏壇を設けるなど、気持ちの整理と向き合える方法を考えておくと、後の不安や寂しさを軽減できます。

まとめ

海洋葬は、自然に還る葬儀として注目を集めており、一般的な葬儀と比べて費用を抑えられるメリットがあります。一方で、天候に左右されやすかったり、お参りの場所が限定されたりするというデメリットもあります。メリット・デメリットなどを踏まえたうえで、海洋葬を選択するかどうか考えることをおすすめします。